「たらこスパ」なるものを始めて食べたのは、もう20年も前のこと。
前橋市のパスタ専門店のメニューのひとつに、それがあった。
あっさりとした感じが、いいなと思った。
...いいなとは思ったけど、僕の中でのブームは数年ほどしか続かず、パスタそれ自体も、口にしなくなっていた。
大学時代、ある教師が、ことあるたびに彼のドイツ留学時代の話をした。
そして、決まってパスタのエピソードを織り込む。
「私はね、貧乏留学生でね。
お金に困ると、食費を浮かせるためにスパゲティーばかり食べていました」
そんな話を何度も聞かされ、「パスタ=金がない」といった誤った認識が僕の中に生まれた。
そんな等号、成立するはずはないと思いながら、パスタを見るたびに「パスタ=金がない」が頭を過る。
先生、あなたは困ったことを私にすり込んでくれました...。
たらこを使ったパスタって、やはり「洋食」?
塩漬けしたり、熟成させたりした食材を使うと、味に深みがでるから不思議。
イカの塩辛のパスタってどうなんだろ。
納豆のパスタはおいしいと聞くけれど、怖くて作れない。
...今日も私はパスタを作る。
フツフツと沸く湯の中で、ゆらゆら揺らめくパスタ。
鍋を覗く僕の頭の中に、フッとあの先生の言葉が浮かんでくる。
まいったなぁ。