小島君

近所に小島君という知人がいる。

とんとご無沙汰しているが。

 

小学生の頃、よく誘われた。

それほど仲が良かったわけではないけれど。

 

釣り友達だった。

僕はそれほど釣りが好きだったわけではないが「ねぇ、行こう」と言われると、つい。

 

自転車に乗って15分。

貯水池が、僕たちの目的地。

 

大したものが釣れるわけでもないのに、出かけていく。

で、不思議なのは、記憶の中の風景は、いつも秋。

 

曇りで、冷たい風吹く秋。

暖かい日の釣りの思い出がない。

 

原始的な釣り道具。

釣り針にミミズをつけて、池の中に放り込む。

 

手がかじかんでいるから、思うように指が動かない。

「あぁ!」とか「うゎ」とか叫びながら、釣り糸を垂れていた。

 

でも、まぁ、なんであんなことをしたいと思ったのか。

それも寒い中、わざわざ出かけて。

 

小学校時代の僕は、理性で動いていなかったということがよくわかる。

ばかだねぇ、自宅で漢字の一つも覚えていればいいのに。

 

…寒空の下、指に息を吹きかけながら庭仕事をしていて、そんなことを思い出した。

なんとなく寂しい思い出。